プラットフォーム一強時代の行く末、キーワードはふたつの”流通”
アサツー ディ・ケイ 沼田 洋一 氏

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2018-09-28 BY うえの みづき

ad:tech tokyo2018のアドバイザリーボードメンバーは総勢36名。業界のリーダーであるメンバーのみなさんからのデジタル広告、マーケティング業界への問題提起を事務局が連載形式でインタビューします(特集一覧はこちら)。

今回登場してくださった株式会社アサツー ディ・ケイ執行役員コンシューマー・インベストメント事業セクター統括代理の沼田洋一氏はキャリアを雑誌のバイイングからスタートしていらっしゃいます。雑誌メディアのビジネスに長く触れてきた沼田氏が感じてきた雑誌コンテンツの強みと、デジタルビジネスでのその強みの生かし方とは。

—デジタル化、データ活用というワードが様々な業種業界で聞かれるようになって久しいですが、沼田さんが注目している分野などはありますか。

データ活用において気になるのはリテール業界です。AmazonがAmazonGOやAmazonFreshでリテールに挑戦していますが、EC化がされていないものはまだまだデータ活用の波が来ておらず、残っているような状況です。日本の流通業は地場密着型で中小規模の会社が多いので、なかなか挑戦しにくい。データが分断されてしまうので、俯瞰してコンシューマーの動きを見ることが難しいのです。個人情報の問題もありますし、他社とデータを共有したがらないというのもあります。POSデータも日々莫大に溜まっていきますが、オンラインのデータとはまだ繋がっていないですね。多くの広告予算を持つ一般消費財メーカーの方が一番気になるのはやはり「売れたかどうか」ですので、広告会社としてもどうやってコンシューマーに「購買」というアクションを取らせて行くのかは課題です。

—データの扱い、というのはGDPR問題で取りざたされるような分野以外でも非常にセンシティブなのですね。

もちろんGDPR関連の問題も非常に重要で、facebook、Youtubeなどプラットフォーマーたちが自社データを外に出さない方針に転換してきています。例えばYoutubeは今年の5月からグローバルで許諾を得たサードパーティ以外は、タグを使った計測ができなくなりました。これまで調査会社のパネルを使って計測していたテレビと一緒にデジタル展開をした時の接触データが突然取れなくなりました。もちろんYoutube単体のデータは変わらず取得できるのですが、他のデータとの統合ができないので「テレビでも広告に接触したし、Youtubeでも接触した」という人の調査が出せなくなりました。これについては、インテージさんが自社のパネルを利用した効果測定の方法を開発され、一部は計測可能になるようです。なかなかプラットフォームを横串できる効果測定は難しいなと感じます。デジタルの強みはOneToOneで個別のデータを追えるところだったのが、今はまたざっくりとした集団の集計データ、10年前の状況に戻ってしまう可能性すらあると思います。ただ、そこはプラットフォーマーがグローバルで決めることですし、彼らの決定も各国の法規制などに縛られますので私たちだけではどうにもならない。プラットフォームを頼るビジネスの難しい部分です。

—何かその状況を打破するような策はあるのでしょうか。

ひとつはメディアが強くなること。動画はオンデマンドサービスの利用者数が急速に伸びていて、質の高いコンテンツに対してはお金を払うという消費が復活してきました。それがテキストコンテンツに向かって行くことだって大いにあると思うのです。私はもともと広告会社の雑誌担当だったので雑誌には特に期待したいですね。というのも、私が雑誌の広告ビジネスをお手伝いしていた時も何十万部っていう発行部数を出している雑誌はごく少数で、数万部の発行部数でありながら「この雑誌にはこんな人が集まる」という地位を確固たるものにしている雑誌には広告が集まったのを見たから。同じことをもっとデジタルでできないかと考えています。何百万PVを求めるようなことはプラットフォームやポータルに任せて、それ以外は特徴のあるメディアに露出して行く、プランの使い分けができるようにする。もしかしたら個人個人を追いかけるデータ活用が難しくなるかもしれないっていうタイミングですから、そこで優良顧客を自分たちで掴めているメディアがいたら強いですよね。

—ここ数年のメディアの記事の流通のさせ方はかなりプラットフォームに依存していたような印象ですが。

実際、メディアがSNSに投稿した内容がどれだけユーザーに配信されるかどうかはプラットフォームの方針次第でいかようにも変わりますからね。プラットフォームのロジックをハックして露出させていくプラットフォーム依存はもう脱出しなければ行けないかもしれないです。各メディアがアプリを作って行くのか?それともレシピメディアのような明確な「使うシーン」の入り口を作って行くのか。様々な環境が変わって行くことを前提に対応していかなければいけないと思います。

—データ化最後の白地図が流通業界、メディアのこれからの課題はコンテンツの流通方法、と奇しくも「流通」がキーワードに頻出していますね。今年のad:tech tokyoではどのようなキーワードで語っていきたいとお考えですか。

今回はキーノートにはAmazonのデレイヤ・セス氏が登壇しますよね。ですので、流通をAmazonがこれからどうして行こうと考えているかを聞くことができるのではと期待しています。もちろん、流通業界をはじめ様々な業界の人に参加してほしいと思ってます。私たち広告会社は自分たちで何かをするという会社ではないので、活発な議論の上でみなさんのビジネスを推し進めて行く。応援にとにかく励んでいきたいですね。
(聞き手:事務局 堀)


<プロフィール>
沼田 洋一
株式会社 アサツー ディ・ケイ
執行役員 コンシューマー・インベストメント事業セクター統括代理
メディア&データインサイト領域の事業開発を担当。ADKでは雑誌のバイイングからスタートするが、メディアプランニング、研究開発と興味と業務の拡がりに応じて、新規部署を立ち上げる社内スタートアップ。メディアプランニングシステムの開発や独自の生活者調査手法の開発など「仕組み」作りが得意。プランニング領域では、ドッグフードから選挙まで幅広いカテゴリーに対応し、FMCGではマスメディアからデジタルメディアまで統合したプランニングを担当。スタートアップ熱が高じて、プランニング経験と独自のデータベースを用いて広告主企業のコミュニケーション効率の改善をサポートする子会社、株式会社アクシバルを設立し、代表を務める。
編著書に『Media Planning Navigation』(2014 宣伝会議)

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