注目は「プログラマティック×クリエイティブ」と「決済」。利便性向上がカギ
楽天 紺野 俊介 氏

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2018-09-26 BY 高島知子

ad:tech tokyo2018のアドバイザリーボードメンバーは総勢36名。業界のリーダーであるメンバーのみなさんからのデジタル広告、マーケティング業界への問題提起を事務局が連載形式でインタビューします(特集一覧はこちら)。

今回は、楽天株式会社の執行役員 グローバルアドディビジョンの紺野俊介氏にお話をうかがいました。アイレップに15年在籍し、うち9年間は社長として手腕を振るってきた紺野氏が、新天地である楽天で担うミッション、そして今後のアドテク領域に期待することを聞きました。

―まさに今年7月、紺野さんはアイレップから楽天へ電撃的に移籍されました。まず、その背景をうかがえますか。

アイレップの代表を2009年から務めてきましたが、所属したのは2003年なので、かれこれ15年、急速に変化を遂げていくデジタルマーケティングの業界を経験してきました。デジタルマーケティングのこれまでの推移を網羅できたのは、私の大きな資産だと思っています。同時に、会社もたった10人からホールディングスで3000人規模にまでなったので、人材の出入りやミドルマネジメントクライシスといった課題もひととおり越えてきたつもりです。一方で楽天は、創業から去年で20年の節目を迎えました。広告事業にも蓄積があるものの、会社としてきちんと本腰を入れてきたのはこの数年です。私の今の上司で、グーグル株式会社の代表などを務めてきた有馬誠が昨年に楽天へジョインし、電通さんとジョイントベンチャーをつくるなどデータ関連の動きを加速させる中、私に声をかけていただいた。これまでの延長の最適化ではなく、新しい楽天の姿を形づくる事業の責任者として私の経験が活かせるなら、ぜひ挑戦したいと思いました。

―では、楽天でどのようなミッションを担っているのでしょうか。

大きくは、我々の強みである楽天IDと購買分析データを元にした「Rakuten Marketing Platform(RMP)」を事業的に確立することと、その発展です。私もこれまで実際に“O2O”や“オムニチャネル”を支援することもありましたが、楽天グループのIDと購買分析データを用いると、本当に大規模なオムニチャネルを実現できるはずです。さらに、ユーザーの許諾があってのことですが、ジオデータ、また通信キャリア事業を含めると、ID情報の精度が一層高まります。

―さらに外部のパートナーと連携することで、実現できることがぐっと広がりそうです。

そうですね、その部分にも大いに期待しています。楽天経済圏の中にユーザーがいて、またさまざまな事業会社がいて、さらに準経済圏の事業者をもつなげていく。そのコミュニケーションの役割を広告が担っていくので、それが私の仕事になっていきます。構想の規模は非常に大きく、また現在43歳の私がこれから40代をどう過ごすかという点でも、やりがいは大きいです。もう一度、現場に近づきたいと思っていましたし、愛着のある日本のために日本としてグローバルに打って出るという自分のイメージにも合致します。前述のように、これほどの経済圏がありながら広告への注力はある意味でスタート地点なので、楽天としてはこれからチャレンジしていくタイミング。どこまでやり切れるか、腕が鳴ります。

―楽天は、楽天技術研究所を筆頭にAI研究にも注力され、テクノロジーの先駆者としてもグローバルで存在感を表しています。AIのアドテク領域の活用についてはどうお考えですか?

非常に可能性が大きいと思っています。今年5月、ビッグデータを分析・活用するAIエージェントの「Rakuten AIris」をまさにリリースしましたが、AIとデータの掛け算、さらにそこから広告ソリューションへの活用を見出していくことは、我々の歩む道のひとつです。特に最新トレンドで注目なのは、AIを活用した「テクノロジー×クリエイティブ」の領域です。我々は楽天技術研究所から新たなAI活用として「Creative AI」を提唱していますが、同じくクリエイティブ領域で、たとえばコピーを量産する、バナー広告をパーソナライズして瞬時につくるといったことを、電通さんやサイバーエージェントさんも模索しています。業界の先駆企業がこうした部分を掘り下げていくことで、ずいぶん前からイメージとしては語られていた「クリエイティブの自動生成・自動最適化」、つまりテクノロジー×クリエイティブから一歩進んだ「プログラマティック×クリエイティブ」が、実現に近づきつつあると感じています。

―それは興味深いテーマですね。ではほかに、今関心のあるテーマは?

決済ですね。当社にも楽天ペイがありますが、以前いわれていたロジスティクスのラストワンマイルに加えて、今や決済のラストワンマイルも存在しています。どうしても日本のキャッシュレス化が遅れを取る中で、グローバルではいよいよ主要プレーヤーが出そろいつつあります。行き着く先は、やはりユーザーの利便性、UXをどこが最高までもっていけるのかという部分になるのかなと。アドテックでは、今後そういったテーマも深堀りできればと思いますね。
(聞き手:事務局 堀)


<プロフィール>
紺野 俊介
楽天株式会社
執行役員 グローバルアドディビジョン アドプランニング統括部 ディレクター
1975年、千葉県生まれ。横浜市立大学卒業後、EDS Japan(現日本ヒューレット・パッカード)を経て、2003年に株式会社アイレップに入社。デジタルマーケティング事業を牽引し、2006年には大阪証券取引所ヘラクレス(現 大阪証券取引所JASDAQ)への上場に成功。同年取締役に就任。2009年からは9年間代表取締役社長を務め、アイレップを運用型広告でトップクラスの企業へと導く。書籍・コラム執筆や、セミナー講演も多数。2018年7月、楽天株式会社入社、同年8月より現職。

<ライタープロフィール>
高島知子
編集者・ライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集者を経て、2010年よりフリーランス。広告、広報、クリエイティブなどマーケティング・コミュニケーション領域を中心に、Webメディアや雑誌、書籍などで活動中。

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