広告業界に足りないのはサウナ?体験の提供を通じて出会いを作れ
大広 大地 伸和 氏

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2018-09-18 BY うえの みづき

ad:tech tokyo2018のアドバイザリーボードメンバーは総勢36名。業界のリーダーであるメンバーのみなさんからのデジタル広告、マーケティング業界への問題提起を事務局が連載形式でインタビューします(特集一覧はこちら)。

株式会社大広の大地伸和氏はご自身の最近の体験を元に「業界の課題」を語ってくださいました。

—大地さんが今お仕事をされているなかで感じていらっしゃる「業界の課題」は何かありますか。

みんなもうちょっと仲良くやりたいかな。広告会社のなかでもクリエイティブ担当とマーケ担当と営業担当、それぞれが「俺だけがやってる」「俺しかわかってない」みたいにお互いに分かり合えていない状態で仕事をしているのが常になっちゃってるよね。そういう根の深い部分を壊していかないとって思っています。インターネットだって本来はいろいろな垣根を超えてダイバーシティで楽しくやっていくための発明だったはずなのに、データを取るためのものになってしまっているから、もっと楽しく生きること考えたいよね。しがらみをなくしたいのは、もちろん人間関係だけではなくて、法規制とかもそう。

例えば、僕のメインの業務地である関西には今ものすごい数のインバウンド観光客が来ていて毎日ターミナルのタクシー乗り場は大混雑してるんです。それはなぜかっていうと、彼らはAirbnbなんかで部屋を借りているからタクシーの運転手さんには馴染みのないエリアに行きたがる。運転手さんにして見たらピンとこないし言葉も通じないからそれだけで5分も10分も乗り場でもめちゃっている。でもこの問題って、テクノロジー入れればすぐ解決できるじゃないですか。それを法規制とか今までの商習慣とか色々なハードルがあって入れていない。こういうのは相手の「気持ち」を軸にすればもっと解決できるのではないかなって思っています。

—「気持ち」が置き去りになりがち、とは言いながらも新しいテクノロジーやサービスがどんどん生まれていますよね。これから流行りそうだと目をつけているものはありますか。

広告って邪魔じゃない?ユーザーのその気持ちってもう流行ってるかもしれなくて、スマホアプリの人気上位は広告を非表示にするアプリだったりするじゃないですか。強制視聴はもうやめたほうがいいんじゃないかと。思いもよらなかった新しい情報に触れられるのは確かに出会いではあるけれど、何か知りたいと思った時に頼る情報源がもうマスメディアではなくて、信頼できる口コミであったり、知人友人から直接聞いた情報になっている今、広告に変わる新しい形態は作っていきたいですよね。口コミはどうしても世界が狭くなってしまうから、今まで広告が担って来た出会いの機能をどこに持たせていくのか。実際に仕事のマーケティング調査などで自分と全然違う職種の若い女性に話を聞いてみたりすると、僕の知らない世界を知っているからすごく面白いですよね。「接点はもてるけど、コミュニティが違う」っていう人とのコミュニケーション。それを作っていきたい。個人間だけでなくて法人同士ももっとお互い気軽に付き合っていくっていうスタイルになっていくと新しくて面白い。

—それだけ軽やかに多くの人とコミュニケーションしていく大地さんから見て、ちょっとお互いにギスギスしているのでは?という状況の広告業界が今を打破するために必要なことは何だとお考えでしょうか。気になっているキーワードなどはありますか?

最近ね、サウナにハマったの。仕事でヘルシンキに行った時に「向こうのレジャーの最先端」って聞いたから、体験してきました。日本のサウナと違って、水着着用の混浴で老若男女、カップル、家族みんなで遊びにいく。ロウリュっていうところのサウナは海の横にあるから、暑くなったらそのまま水着で海に飛び込んで、またサウナ入って。カフェが併設されていたり、建物もオシャレだったり、自然と隣り合わせになっている環境で自然も街もどっちも楽しめる遊びなんです。

—それはとても楽しそう!ぜひ行ってみたいです。しかし、それが広告業界のキーワードと何の関係が……。

僕が実際に体験して感動したことをお話ししたら、興味湧いたでしょう?そういう体験を作ることが今の業界に必要だと思います。「すごくいいな」と思わせる体験を作って、それが情報として拡散していく。ヘルシンキの場合はアウトドアと街と健康を全部繋げているから体験として新しくて楽しいわけです。今の日本の広告会社はそういう体験を作るベースがとても弱いです。CMをはじめ、「イメージ」を発信し続けてきた経緯があるからですが、そこを打破して幻想じゃなくて現実の経験を提供していけるかどうか。そこがコミュニケーションの作り手たちに求められているのではないでしょうか。

—そのコミュニケーションの作り手たちが集まるad:tech tokyoに期待することを教えてください。

もうアドって冠するのやめてもいいんじゃないかっていうくらいに多くの人が来ているので、どんどん扱う概念を広げて行っていいと思ってます。一方でセッションが綺麗にまとまっちゃってるので、もっとヤバいやつが出てくることに期待したいですね。

(聞き手:事務局 堀)

<プロフィール>
大地 伸和
株式会社大広 執行役員 CTO
株式会社 大広に1990年入社。
大広のCTO(Chief Technology Officer)。
広告業界で、いち早くデジタルテクノロジーに注目。
アドテクだけでなく、あらゆるテクノロジー領域を応用したサービス開発を推進。
CESをはじめ、ミラノ・サローネ、メゾン・ド・オブジェ、アルスエレクトロニカなど、
テクノロジーに関連する世界中の見本市や
フェスティバルを数多く視察し、新たなビジネス創出に挑み続ける。
デジタル・テクノロジー業界のさまざまな著名人とも親交が深い。

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