後追いマーケターからの脱出!ユーザーを理解する最も簡単な方法とは
Moonshot Inc. 菅原 健一 氏

投稿者アイコン

2018-09-11 BY うえの みづき

ad:tech tokyo2018のアドバイザリーボードメンバーは総勢35名。業界のリーダーであるメンバーのみなさんからのデジタル広告、マーケティング業界への問題提起を事務局が連載形式でインタビューします(特集一覧はこちら)。

—菅原さんとad:techの関わりはいつからですか。

ad:techがまだ日本に上陸する前、海外で開催されていたad:techにとても衝撃を受けたのが最初です。サンフランシスコとニューヨークだったかな。最初に行ったときにいい刺激を受けたので、何年か連続で参加したのですが、出展する企業の成長スピードがとても早いことに驚きました。小さなブースを出していた企業が、翌年には一回り大きなブースを陣取っていて、さらに翌年には一番大きなブースで発信をしている、「デジタルの世界はこんなにダイナミックに成長するのか」と自分を鼓舞するきっかけになりました。

—確かにこの10年間のデジタル業界の企業の動きは非常に活発でしたね。ad:techでの議論のテーマに変化は感じますか。

僕がサンフランシスコやニューヨークのad:techに行っていた頃は出展企業はほとんどアドテクノロジーの会社でした。それが今はマーケティング全体論になってきましたよね。今回の東京も同じ。新しくて珍しいテクノロジーを担当者たちが勉強しにくる場からステップアップして、企業の決裁者や役員クラスの人たちも議論しにくるような場に変化しました。成長の理由はデジタルによって解決できる範囲が大きくなってきて、風邪薬レベルだったものが重要な課題を解決できる、治せる力を持てるようになったということだと思います。かつての登壇者たちには出世している方も多いし、新たな登壇者も出身業界が広がってパワーアップしてきている。その分、出展者にもパワーアップを求めたいですよね。

—出展者にパワーアップが求められているとはどういったことでしょうか。技術やサービス自体は新しいものが生まれてきていると感じますが。

「モノ売り」になってしまわず、参加者や登壇者たちの対等なパートナーになれるような戦略の話をしていきたいなと。僕がかつてこういったイベントに出展していた時、出会った人に「ネジの規格を説明するのではなくて、うちの会社のどこにそのネジを使えばいいのか提案してくれるのが大事だ」と言われたことがあって。その時、僕は相手の会社のことを調べて自社の製品をどこに使ってもらえれば課題解決になるのかをうまく提案できたのでそう褒めていただけたのですが、実際のところ技術の話ばかりされても難しいですよね。技術の細かい部分よりも使いどころを教えてほしい。

—菅原さんご自身の経歴ではずっとBtoBの事業に携わっていらしたのですか。

実は広告業界に入ったのは30代になってからで、それまではBtoCの制作会社にいました。ガラケー全盛期、有名キャラクターの待ち受けコンテンツを販売するサイトの制作をしていました。ユーザーってとても正直で面白い。「画素数がこんなに増えました!」なんていう技術の話をしても、「じゃあ待受ダウンロードしよう!」とはならないので、待受画像をダウンロードして待受画面に設定するという行為の中でどう心の隙間を埋めてもらうかを考えます。当時には珍しく、アクセスログを制作側が見られるようになっていたのでキャンペーンによってサイトの会員数が何万単位で増減するのがダイナミックにわかって楽しかったです。使いたいもの、欲しいものがあれば気に入ってくれるユーザーと、「まあ他よりはマシだし」程度であったとしても場合によっては使ってくれるBtoBクライアントの違いはありますね。

—では、どちらかというとメディアやコンテンツのお仕事だったのですね。

そうですね。その面白さを垣間見たから、これからの時代はメディアの人たちの力が求められていくのだという確信もあります。テクノロジーとユーザーを繋ぐ間に位置しながらも、ユーザーの欲求を敏感に察知して心の隙間を埋めていくコンテンツができるのはやはりメディアだろうと。よくマーケティングの世界って、「ユーザーが変化したのでマーケティングも変化する」と語られるじゃないですか。でも、それって後追いでしかなくて、動きとして遅いですよね。ユーザーが変化している生の現場を見ずに、自社への影響だけしか見ていないのかもしれない。

—ユーザーの変化を理解する方法はありますか。

すごく簡単な方法があります。ユーザーと同じことをやる。それだけ。良いマーケターの条件は良いユーザーであることでないでしょうか。みんなが面白がっているものをもし自分が面白がれないなら自分を疑ってみる。批評していてもしょうがないので、ターゲットの年齢層と離れてきたのであれば分かる人に任せてみる。理解もできるし、かつ楽しむこともできるのであれば現役です。ちなみに僕はInstagramがユーザーとしては限界ラインかな……。tiktokも試してみたけれど、肉体的に限界を超えました(笑)

—確かに、tiktokは一緒に動画に出てくれる友だちがいるかどうかがキーであったり、踊れる元気を求められたり、五感で楽しむ体力が必要ですね。

これからのサービスはまた五感をたくさん使うものが増えてくると思います。例えば音楽はウォークマンが生まれたのをきっかけに、1人の世界で聴けるようになり、どんどん個の世界に入り込んでいきました。でも、今また誰かと一緒に体験として音楽を楽しむことの人気が上がっていますよね。聴いた場所の匂いとか体全身で感じるとか、誰かと一緒に行ったとか。ライブ興行が伸びてきているのは、テクノロジー、特にスマホとネットによって孤独になっていた世界が、また「みんなで遊びたい」という欲求を取り戻したということ。振り子の原理のよう。だから、ビジネスの世界でもad:techみたいなミートアップに参加して大勢で話をすることの意味を見出してほしいですね。

<プロフィール>
菅原 健一
これまでのBtoC、BtoB、大企業、スタートアップ、女性向け、男性向け、サービス、メーカーなど、あらゆる企業のコンサル、アドバイザーの経験を活かし企業の10倍成長を支援するアドバイザー業として2018/7/1にムーンショットを創業。 過去の略歴 ・2016年6月スマートニュース入社。 月間600万人を超える利用者、1人あたり毎日12分以上も利用されているSmartNewsの中でブランド広告責任者(Head of Brand Advertising)を務める。 ・スケールアウト社(現Supership社)にてデジタル広告プラットフォームのサービス開発とマーケティングを担当。株式会社medibaによるスケールアウト社買収に伴いmedibaのCMOに就任、広告事業およびマーケティング施策を牽引。 スケールアウト社、株式会社nanapi、株式会社ビットセラー3社が合併しSupership社となり、同社CMOとして、ブランド広告主の課題解決やアドテクノロジー、データドリブンマーケティングの啓蒙、事業展開に貢献。

Top