顧客体験を再発明する、ヒントはリテールテックにあり
アイ・エム・ジェイ 加藤 圭介 氏

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2018-09-28 BY うえの みづき

ad:tech tokyo2018のアドバイザリーボードメンバーは総勢36名。業界のリーダーであるメンバーのみなさんからのデジタル広告、マーケティング業界への問題提起を事務局が連載形式でインタビューします(特集一覧はこちら)。

今回は「REINVENTING THE EXPERIENCE」をスローガンに企業改革支援を行なっている株式会社アイ・エム・ジェイ取締役COO兼アクセンチュア株式会社デジタルコンサルティング本部マネジング・ディレクターの加藤圭介氏が登場。最近のユニークな顧客体験改革について伺ってきました。

—加藤さんのいらっしゃる、株式会社アイ・エム・ジェイは2016年よりアクセンチュアのグループに参画されましたよね。グループになったことで事業の動きは変わりましたか。

私たちアイ・エム・ジェイは1996年にWEB制作会社としてスタートさせていますが、2005年頃インターネットがマーケティングの1チャネルとなりつつあったタイミングではデジタルマーケティングの支援企業へシフトしてきました。また、デジタルの重要性が高まり、デジタルがマーケティング領域を超えて経営アジェンダとなりつつあった2015年頃からは、「EXPERIENCE(顧客体験)」の支援企業として進化してきました。その過程で2016年7月にはアクセンチュアのグループに参画し、「REINVENTING THE EXPERIENCE」というスローガンのもと、EXPERIENCEドリブンでの企業変革をEnd to Endで支援することを目指しています。

—デジタルの浸透に合わせて業務領域を広げていらっしゃったのですね。

もうデジタルテクノロジーって我々の生活に入り込んでいますよね。全ての産業においてデジタルが絡まないビジネスはなくなるし、UBERを見ても分かる通り、デジタルはビジネスや業界そのものを大きく変革していく力を持っています。なので、IMJは単にマーケティング領域の支援だけでなく、デジタルを活用してクライアントのビジネスを変革していくパートナーを目指していきます。

—確かにUBERのユーザーは新しい体験に魅力を感じては使っていますね。

今、私は「Retail Tech」に非常に注目しています。小売業全体でいうとE-COMMERCEチャネルより圧倒的にリアル店舗チャネルでの購買の方が多いですよね。なので、リアル店舗での接客などを変革し新しいショッピング体験を実現していく領域はとても興味深いです。例えばアパレル店舗で言えば、デジタルテクノロジーを活用して試着室での体験を大きく変えることもできます。これまでの試着室は、何着か持って入って自分の試着姿を鏡に映し、サイズが合わなければ店員を呼んで変えてもらう。そして試着できたら一緒に来た人に「どう?似合う?」と見てもらい、買うか買わないか決めているかと思います。これがデジタルを活用すれば、服にセンサーが付いていて何を持って入ったか分かるので、サイズが合わなかったらタッチパネル型の鏡でサイズ変更をするとすぐに店員が持ってきてくれたり、カメラで試着姿を撮影しそのままinstagramに連携して友達に評価してもらう事で購買意欲が高まったり、そもそもショッピング自体が楽しくもなりますよね。もちろん、その場で買う決断が出来なくても記録として残っているので、後にE-COMMERCEサイトで購入することもできる。また、Amazon GOのようにレジに並ぶストレスがなくなるという点でもショッピング体験が大きく変わりますよね。このように、デジタルテクノロジーを活用してショッピングが楽しくなったり、便利になったりする、その辺りにとても可能性を感じます。

—その体験はユーザーとしてはとても魅力的ですね。一人で買い物に行ったとしても、誰かからのレコメンドは欲しいし、試着室のなかでサイズ在庫がわかるだなんて店員さんに対して気を使わなくていいので店舗に行く理由ができます。

接客レベルは必然的に上がっていきますよね。例えばリアル店舗での接客において店員が持っているタブレット端末に顧客の購買履歴や好み、来店頻度などをもとにした「おすすめすべき商品」を表示すれば店員はより良い提案ができます。顔認証の技術も進んでいるので、店舗に入ってきた瞬間に誰が来たのか通知を出すことだって可能。個人情報の観点としてはどうなのか……という課題もあるにはあるのですが。お客さんにとってはオンラインなのかオフラインなのかはどうでもいいことで、一貫したサービスを望むはずです。

—では、最後に今年のad:tech tokyoに期待することを教えてください。

スタート当初はまさに「アドテクノロジー」の色合いが強かったこのイベントも、ここ数年アドテクノロジー含めた「マーケティング」、もっというとビジネス寄りになってきていると感じています。広告はあくまでマーケティングの一部を担うものでしかないので、マーケティング全体やビジネスの話が増えてきたのはデジタルが経営アジェンダになりつつある証拠ではないかと感じます。ただ、今までのマーケティングに対して「+デジタル」では不十分。デジタル時代のマーケティングに最適な組織編制や業務オペレーション、それに必要なプラットフォーム、そして人材など根本的な部分を変革していく必要があると思います。ここ数年でこういった変革に着手している大手企業も増えてきてると感じており、我々パートナーとの関係も変わってくると思っています。そういった話も議論できると面白いですね。

(聞き手:事務局 堀)


<プロフィール>
加藤 圭介
株式会社アイ・エム・ジェイ
取締役COO
兼 アクセンチュア株式会社
デジタルコンサルティング本部 マネジング・ディレクター
2001年9月、株式会社アイ・エム・ジェイ(IMJ)入社。 数多くの大規模オウンドメディア構築、デジタルマーケティング支援を行う。 2006年に企業のData Driven Marketing支援を行うMarketing & Technology Labs.を設立し 、CXを実現するためのプラットフォーム「IMJ CX Platform」構築・運用とデータ分析&最適化のコンサルティングサービスを推進。 この事業を同社の中核事業の1つに成長させた。 2008年執行役員、2012年取締役就任。2018年アクセンチュア株式会社デジタルコンサルティング本部マネジング・ディレクター就任(兼任)。現在は世界最大の総合コンサルティング会社アクセンチュアグループのデジタルエージェンシーとして、スローガンとして掲げている 「REINVENTING THE EXPERIENCE」 を実現すべく両社の価値融合を推進。

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