デジタルは通信制限を超えて”なんとなく”接触ユーザーを動かせるか
オープンエイト 高松 雄康 氏

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2018-06-21 BY うえの みづき

ad:tech tokyo2018のアドバイザリーボードメンバーは総勢35名。業界のリーダーであるメンバーのみなさんからのデジタル広告、マーケティング業界への問題提起を事務局が連載形式でインタビューします(特集一覧はこちら)。

今回はオープンエイト代表取締役社長兼CEOの高松雄康氏が登場。経済界からのAIへの視線がますます熱を帯びていく昨今、実際にAIを活用したサービスを提供する高松氏にAIへの正しい期待の仕方と動画の可能性を広げる通信のこれからについて伺ってきました。

—オープンエイトの皆さんは昨年のアドテックで、ユーザーの嗜好にパーソナライズした動画コンテンツを自動生成する機能「LeTRONC AI」を発表されていました。自社サービスにAIを取り入れていらっしゃるお立場としては、やはり世間からのAIへの熱視線はお感じになりますか。

そうですね。ただ、「AIってもうなんでもできるんでしょう?」と過度な期待をしている人もいるなとも思います。実際には実装段階に来ているもの、まだ研究段階のもの様々です。世の中のサービスとしてすでに実装されているのはチャットボットなどでしょうか。その他、工業製品の生産ラインの単純作業をビッグデータとして読み込んで人間の手をかけなくてもいいような改善にAIは用いられていますが、サービスとして生活者に直接AIのメリットを提供できているものはまだまだ少ないですよね。ビッグデータがあって、それを分析・解析し、AIに学ばせて…というステップを経てサービスがアウトプットとして出てくるので。

—動画の領域は特にハードルが高そうです。

私たちのサービスも蓄積した何千本の動画と、さらにはユーザーの行動履歴があってこそできているものです。「AIを活用したい」と一口に言っても、AIはあくまで人間が定めたルールに沿って学習していきますから何を目指したいのか方向性を定めることが大切だと感じますね。世の中全体としてAIが活躍するのはもう少し先でしょう。進歩のスピードを促進させるためにはもっと色々なデータがオープンになっていけばと思います。

—では、高松さんご自身が注目しているキーワードはありますか。

「5Gとリッチコンテンツ」です。5Gの時代にどれだけリッチなコンテンツを提供できるかが重要になるのではないでしょうか。もともとインターネットは黎明期に検索エンジンを軸にした発展をしました。ユーザーが「〇〇について知りたい」と感じた時に情報が得られるツールとして、目的志向の強い人たちに使われていたんですね。それが、「なんとなく眺めるもの」に変わってきた。ただ、まだテレビや雑誌のように「なんとなく」の人たちに刺激を与えて行動を喚起できる力があるか、というとそうではない。コンテンツ自体の力もそうですし、回線速度やパケット容量の問題は生活者にとっても今はハードル。5Gの到来で「この動画観たいけど、通信制限が・・・」と手を止めることがなくなると、いよいよですね。

—その5G時代の到来タイミングはいつ頃と見込みますか。

思ったよりも早く来そうです。2020年には5Gでしょう。そうなればARや VRもリッチコンテンツとして当たり前に提供される。ハード面の進化スピードも同様で、先日発売されたばかりの「Oculus GO」も衝撃的でした。今までのVRと異なりセッティングも簡単で、通信端末一体型。ゲーム好き向けという狭い世界の技術からVRが脱したな、と感じました。これだけ身近に精度の高いVRを体験させるようになったのは驚きです。VRもARも5G到来に向けこの短期間で大きな変化をしてくるので注目です。

—ユーザーが情報にアクセスするための環境が向上してくると、クリエイティブもレベルを上げていかなければなりませんね。

VRを例にすると、4Kではなく8Kが求められます。「自分がそこにいる」と圧倒的にリアルに実感させるには解像度は8K必要なんです。ただし、4Kですら動画の「編集」は難しくて、素材として動画を読み込むのにとても時間がかかる。動画を撮るだけなら、iPhone Xでもできるのに、インフラ環境とソフトのギャップが大きい。それこそゲーム業界はそこへの投資スピードが早いんですけんどね。通信インフラ含めてオリンピックに向けて環境は良くなると信じていますので、日々の生活が豊かになるような情報流通に少しでも関われたらと思います。

<プロフィール>
高松 雄康
株式会社オープンエイト
代表取締役社長 兼 CEO
1996年、株式会社博報堂に入社。主に大手自動車メーカーのキャンペーン全般を担当。2005年より、日本最大級の化粧品クチコミサイト@cosmeを運営するアイスタイルで取締役兼COO(最高執行責任者)、CMO(最高マーケティング執行責任者)などを歴任。また関連事業を運営するコスメコム、コスメネクスト、アイスタイルグローバル(シンガポール)のCEOとして国内外の化粧品関連事業を統括し2012年に東京証券取引所1部に上場。現在は2015年4月に創業した株式会社オープンエイトの代表取締役兼CEOとして、日本最大級の女性系メディアに特化したスマホ動画アドプラットフォームとおでかけ動画マガジン「LeTRONC(ルトロン)」を展開。

ad:tech tokyo 2018の詳細はこちらから

イベント概要
開催時期: 2018年10月4日(木)、5日(金)
開催場所: 東京国際フォーラム  東京都千代田区丸の内3丁目5−1
公式サイト:http://www.archive.adtech-tokyo.com/ja/

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